介護保険制度、障害者福祉制度などの充実により、福祉サービス、介護サービスは社会的整備がすすんでいます。住民参加型在宅福祉サービス団体も、これらの制度の事業をあわせて実施することにより、活動を伸ばし、安定化することも可能となりました。また、NPO法人(特定非営利活動法人)の制度ができたことも、事業への取り組みを容易にしました。
けれども、私たちがめざすのは「そこに制度があるからではなく、ニーズがあるから」という、活動を始めた頃の気持ちをいつも忘れずにいたいと思います。
気 づ き:地域の課題や住民のニーズを発見する
学 習:知識を増やし、問題の原因を分析し、解決策や「自分たちは何をやるのか」を考える
啓 発:「一緒に学習しよう」と呼びかける
グループ化:関心をもった人たちで仲間づくり
住民参加型在宅福祉サービスは、これまでも制度の対象とされていないニーズを的確に捉えて、住民(同士)ならではの工夫や関わりで活動につなげてきました。時代環境が変わっても、その役割は揺るぎません。
多くの住民参加型在宅福祉サービス団体は、介護保険や支援費の指定事業者としても活動しています。
なぜ、助け合いの活動団体が制度的サービスも行っているのでしょうか。その答えは、「そこに利用者のニーズがあったから」に尽きると思います。
それはいつしか、「地域住民ならではのきめ細やかな事業にしよう」、「自分たちの事業が本当に利用者の力になっていくよう、利用者に働きかけよう」という積極的な意味をもってくるようになります。
制度的サービスを担うことによって、収入の安定というメリット以外に、
〇 実践を通じて感じた制度の限界や改善点を制度・政策への提言として活かせる
〇 制度ではまかないきれない(住民としての助け合いの)活動として大切なことや次なる活動の課題が
見えてくる
〇 住民に対して“自律的な賢いユーザー”としての制度活用を働きかけられる
などのメリットがあります。
常にこうした「住民や地域の立場からのウォッチャー・評価者」としての視点や関わりをもちながら 制度を活用・開拓していくところに、住民参加型の真骨頂があるといえるでしょう。
どんな小さな非営利の活動体であれ、組織として地域で活動を始めるにあたっては、団体のことを他の人や組織に説明できるような諸条件の整備が必要となります。
最高裁判所の判例によれば、法人格をもたない任意団体であっても、「団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表選任の方法、総会の運営、財産の管理など、団体としての主要な点が確定している」場合、その団体は「権利能力なき社団」として認められるということになっています。
すなわち、「権利能力なき社団」として社会的に位置づけられる程度の組織運営を行っていくことによって他に対する説明責任が果たされ、地域の中での信用も形成されていくと考えます。
! 組織運営に最低限必要な事柄 check !
〇 会の意思決定のプロセス、代表や役員会の責任・権限などが、会則、規約、定款など、求められる
段階に応じて明文化されている
〇 団体の財産と団体に参加する個人の財産は、明確に分けて管理されている
〇 団体の財産管理について、会計処理のルールがある
〇 会員の管理、活動や利用にあたっての担い手・利用者の約束事が明文化され、わかりやすく説明され
ている地域の市民や行政、他団体に対して、自分たちの活動の内容や今後の方向などを、定期的に
あるいは求めに応じてわかりやすく説明することができる
〇活動上の事故に対する予防や万一起こった場合の対応について明文化し、会員の周知・理解を得ている